2021年12月09日

緑山荘50周年 前企画 第1弾

50年間変わらないサービスの神髄と
コロナ禍で見つけた対話のサービスに変わる見まもるサービス
~接触を減らされ80代の女将が見つけたお客様への真心のサービス~

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「信州乗鞍高原温泉 緑山荘」は、上高地にほど近い長野県乗鞍高原に位置します。
乳白色の温泉と八角形の露天風呂・女将の作る畑で採れた野菜など自然の食材を使った食事が自慢の宿です。
昭和47年(1972年)に開業して来年50周年を迎えることとなりました。50年を迎えるにあたり、女将がコロナを体験してもなお進めてきたサービスについて語っていただきました。
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npo02開業当初npo02

外観と女将
昭和47年学生村からスタートし延べ5万人以上のお客にお泊まりいただき、来年50周年を迎えることができます。本当にありがたいことでございます。
開業以前は、山間の貧しい乗鞍高原で、牛を飼い、畑を耕して生活していました。安曇村役場から夏の涼しさを生かした学生村発足の相談があり、収入につながるならと始めました。
ノウハウもなく始めた民宿でしたが、白骨温泉の仲居・電話交換手・スキー場のチケット販売での経験と、主人の協力で学生さんたちを泊めることができました。私は家の中のこと、主人は学生さんたちの面倒を見ることが仕事でした。
緑山荘50周年 前企画 第1弾

主人は、我が子より少しだけ年上の学生さんたちをとても可愛がっていました。午後の自由時間に一の瀬牧場や乗鞍岳・上高地などに連れて行き息抜きや観光をさせました。時には、牧草刈りやとうもろこしの販売なども手伝わせていました。そして仕事が終わるとみんなで野外で食事をしました。
一の瀬で宴会

私は、主人から得た学生さん達の様子や情報を基にメニューを決め、学生さんとの話の話題にしました。いつごろからか、毎日学生さんのことを思い、何をすれば喜んでもらえるのかを考えるようになっていました。
緑山荘50周年 前企画 第1弾


npo02触れ合いによって生まれた笑顔npo02

まだ温泉が引湯されていないある日、お風呂の空焚きをしたことがあります。廊下に煙が漂っているのを、2階に宿泊していた女学生 Iさんが見つけて
「おばさん火事‼︎」と、厨房に駆け込んできました。2人でお風呂のなかで、煙でむせて涙を流しながら原因を探しました。結局見つかるわけもなく、主人が原因を突き止め、焼けた部分を取り替え事なきを得ました。女性2人では、何もできないのに大騒ぎをした事は後々の笑い話です。
Iさんは遊びに出る時は、私たちの息子や娘を一緒に連れて行き面倒を見てくれました。
そんな愛情豊かな Iさんは、宿の中でも一目置かれる存在でした。
同時期に泊まっていた物静かな紳士のY君と結婚したと連絡をもらった時は、薄々気が付いていたのですが、まさか結婚までするとは、驚きました。結婚しても子供が生まれても家族旅行ができる間は、毎年来てくださいました。我が家の小さな孫と、お子様が遊ぶ姿はほほえましいものでした。
数年前、娘さんの名前で予約をしてサプライズでお越しいただいたときは、とても驚き嬉しかったことを思い出します。受付カウンターで宿泊情報を記入している娘さんの手元を見ていると、懐かしいY君の名前が記されました。驚いて顔を上げるとY君が相変わらずの笑顔で立っていました。宿泊中お越しいただけなかった間の事を、長い時間語ってくれました。帰りに Iさんが好きだった畑の野菜をお土産にお渡ししました。
緑山荘50周年 前企画 第1弾
私にとって、お客様と会話して一緒に何かをすることや、畑で収穫した野菜を食べて、お客様が笑顔になっていただくことがサービスです。笑顔で「ありがとう」と言ってお帰りになるお客様を、見送る時が心満たされ安堵する時間でした。
しかし、新型コロナウィルスによりお客様と接することを制限されました。

npo02お客様に支えられた休業中

3ヶ月間宿を閉め、一時は新型コロナウィルスに恐れをなし、何もできないまま不安ばかりの日々を過ごしました。スタッフは少しずつ再開に向けコロナの情報収集をして対策を立てていましたが、私は畑作業を始めた時も、お客様に収穫した野菜を食べてもらえず無駄になる気がして仕事も進みませんでした。
まだ再開の準備を整えている頃、わざわざ宿の様子を聞いて高校生の時からお越しの常連のお客様が泊まりに来てくださいました。
「おばちゃん、大変な時期だけどお互い頑張ろう。またおいしい食事を食べに来るよ」
その言葉に力をもらい、子供や孫が増える度みんなでお越しくださるお客様がいることに、こんな小さな宿を心配してくれることに感謝しました。おいしい食事の元となる野菜作りにも力が入るようになりました。
緑山荘50周年 前企画 第1弾

npo02接触回避の中での営業再開

営業を再開しスタッフが考え出した対策は、受付のコロナ防止シート、受付の時間短縮、接客時間の短縮、
緑山荘50周年 前企画 第1弾
お客様ごと個室での食事、
緑山荘50周年 前企画 第1弾
浴室や露天風呂の貸切りなど
緑山荘50周年 前企画 第1弾
お客様との接触を極力避けるものでした。感染防止のためお客様だけの空間と時間の確保の代償に、お客様との貴重な時間や会話を失ってしまいました。
食事提供の時の会話や食事の様子を見て何がお好みなのか、滞在中の様子も、ふとした話の中からお客様の様子や情報を聞くこともできません。ただ、食事と温泉と布団を提供する施設になってしまいました。
コロナ禍での営業は、誰もがはじめての経験です。マスクをつけての対応、消毒作業、食事の提供の変更、衛生面の安全を考えて対応するだけで手いっぱいでした。

npo02見まもるサービスでお迎えいたします

1ヵ月経った頃お客様が嬉しい言葉をくださいました。
「会社よりも自宅よりも、安心して過ごせました」と。久しぶりにお客様の顔をきちんと見た気がしました。笑顔のお客様を見送ることを思い出しました。
お客様の安全を守るためのコロナ対策、会話が減ってもお客様には伝わっていました。
話を聞かなくても、お客様の様子を観ることができます。駐車場で車を降りる様子からお客様同士の関係が、歩き方で体調が、服装で旅の目的が、食後のお膳で食の好みが、お風呂に入っている時間や回数で温泉や露天風呂が気にいっていただけたのかどうかなど、その一つ一つのピースをつなげておおまかな人となりが見えてきます。
コロナにより宿泊定員を1/2まで減らしたこともあり、1人1人のお客様を見まもる時間が増えたことも幸いしています。
安全を優先しながら、会話するサービスを補う見まもるサービスを強化して、1泊2日の短い時間の中でお客様の望むものを提供でき笑顔になっていただければコロナを乗り越えたと胸を張れます。
緑山荘は、ウィズコロナ、アフターコロナとまだまだ進化を続けています。

玄関を出るだけで見られる天の川を生かした感動提供など、自然を感じてリフレシュできることを新しく考えています。
緑山荘50周年 前企画 第1弾
心強いスタッフとともに、50周年を迎えるべくお客様の安全と安心を守りながらお越しをお待ちしております。
緑山荘50周年 前企画 第1弾